「情報が多すぎて逆に何が正しいのかわからない」
キャンプは適切な知識と常識を持ったうえで、安全に道具を使いこなすことさえできれば誰でも気軽に楽しめるレジャーです。しかし、自然の中で非日常的な時間を過ごすわけですから、一歩間違えれば怪我もするし自然破壊に加担してしまうこともあります。本記事では、キャンプでよく言われる常識や定説、あやしいルールが本当かどうかを、アウトドア内外の専門家に語っていただきます。
地球環境には紙皿&割り箸よりもマイカトラリーがいいって本当?
キャンプやBBQを楽しむときに必ず使うのがカトラリー。中でも安価で手に入れやすく数も揃えやすい使い捨ての割り箸や紙皿、紙コップを使う方も多いのではないでしょうか。そんな使い捨てカトラリーについて
「使い捨ての割り箸などは森林破壊につながるから、使うべきではない」
というような説もよく聞きます。
そこで、有限会社きたもっくの地域資源活用事業部の福島淳平さんに、中山間地域の資源活用の観点からその真偽をお聞きしました。
産地や使い方によっては紙皿&割り箸こそおすすめ
国内の森林維持目的で伐採された間伐材が原材料なら、むしろ環境によいでしょう。逆に再生プラスチックの製品でも、数回使う程度なら環境に逆効果になることもあります。
国内の林業は利益を生みづらく、適切な森林管理が難しい状況です。そのため、間伐材を割り箸に加工するのは、森林の健全性の維持という視点では望ましいくらいです。
ただし外国産はおすすめしません。世界的には違法伐採などによる環境破壊のほか、先進国と後進国の賃金・物価のギャップを利用した違法行為がまん延しています。
加えて木材資源の輸入は輸送コストが高く、環境へも高負荷です。さらに海外産は情報が少なく、適正な木材を原材料としているのかわかりにくいという側面も。
国産材であれば、輸送の環境負荷を抑えられるだけでなく、正しい情報を得やすいといったアドバンテージがあるのです。
植物由来の洗剤は環境に優しいって本当?
自然の一部を借りて楽しむ遊びだからこそ、自然環境への影響について高い意識を持つキャンパーは多いです。可能な限り自然に優しいキャンプを心がけることは、自分たちが楽しむためのフィールドを守ることにも繋がりますし、とても大事な意識です。
そんな中で
「キャンプで洗い物をするならなるべく環境に優しい植物由来の洗剤を使うべき」
という話は必ず聞きます。
この説の真偽について、横浜国立大学大学院の環境情報研究院で教授をされている大矢勝さんに、洗浄・洗剤研究者の立場からお答えいただきました。
植物由来=環境に優しいとは限りません
植物由来の洗剤は石油由来の洗剤よりも生分解性(微生物などで分解されること)に優れるケースが多く、環境への負荷は低い傾向にあります。
しかし石油由来であっても植物由来とまったく同じ物質を作れる場合も多く、両者を比較して一概にどちらが環境に優しいとは言えません。
さらには、今世の中にある洗剤はかなりの部分で植物由来の原料を使っています。つまり多くの洗剤が植物由来の洗剤と言えるのです。
「自然に優しい洗剤」は何を基準に選べばいいか、これは「気遣う自然」をどの段階にするかによって変わります。
たとえば石鹸と合成洗剤(植物系)を比べた場合、目の前の小川に流すなら石鹸のほうが優しいと言えますが、世界的なパーム油の消費量の削減などを考えると、合成洗剤のほうが優しいとも言えるわけです。
安心・安全に楽しくキャンプをするために正しい情報を
自然の中で、非日常的なひとときを満喫できるのがキャンプの魅力のひとつ。普段目にしないようなキャンプ用の道具を使うのもまた楽しいものです。
しかしそれゆえに正しい知識や情報を身につけることが、安心してキャンプを楽しむためには大事になってきます。
「キャンプあやしいルール真相解明-根拠のない思い込みにサヨウナラ-」は、キャンパーの間にはびこる真偽不明の「マナー」「ウンチク」「テクニック」について、アウトドア内外の各専門家43名にその真偽を聞いた本です。
専門知識を持ったプロフェッショナルの目で、様々な角度から考察された情報が掲載されています。
キャンプを楽しむ中で誰もが一度は感じたことのある「それって本当?」というモヤモヤがスッキリすること間違いなし!