キャンプで正しく「癒される」ためには、エビデンスが重要
いつもとは違う場所で、いつもとは違う時間を過ごす――キャンプは日常を忘れて楽しむレジャーです。そんな理由もあってか、キャンパーたちのSNSなどを見ると「前向きな気分になれない時や憂鬱なことがあった時に、キャンプに行ったら復活できた!」というような「体験者の声」もよく見かけます。でも、もしあなたがその書き込みを見て
「それってただの思い込みでしょ?」
「キャンパーって何でも都合よく解釈するよね!」
「ブームに乗ってる感を出してるのかな?」
なんていうひねくれた感想を持ったなら、ぜひここで紹介する「キャンプが心とカラダにもたらす素晴らしき効能」を読んでみてください。キャンプ未経験の方は、きっとキャンプというレジャーに興味が出ると思いますし、すでにキャンプを始めている方は自身のキャンプスタイルを再考するきっかけになるかもしれません。
重要なのは、その道の専門家によって導き出される「エビデンス」です。しっかりした根拠に基づいたキャンプの効能を理解して、「正しく」癒される方法を見つけてください。
「なんとなく癒される」のではなく、科学的に癒される!
キャンプに行って自然の中に飛び込むと癒される気がする。
多くの人がそう言います。たしかにそんな風にも感じます。でも、それはなぜなのか。そこには「なんとなく」や「直感的に」という感覚的な理由ではなく、「自然は人間の心を癒してくれる」という、ちゃんとした根拠があります。しかもエビデンスは1つではなく、何個もあるのです。
そのうちのひとつとして挙げられるのが、植物が発する「フィトンチッド」という物質。
フィトンチッドとは、植物が、自らを攻撃してくる有害な菌や微生物から身を守るために作り出す物質で、消臭効果や空気を浄化する効果があります。いわゆる「爽やかな森の香り」の元となっているのがフィトンチッドです。この物質は、人間の自律神経を整え、癒しの効果を与えてくれます。だから、フィトンチッドが満ち溢れた自然の中でキャンプをすると、人は癒されるというわけです。
また、花や木、川や海などが作り出す「曲線」にも癒やしの効果があります。街には、ビルや標識など、「直線」で形成された人工物が溢れていますが、それらを見ながら過ごす日常から距離を置き、自然が作る曲線に囲まれながら過ごすことで、緊張状態から開放されるという効果が見込めるのです。
もしあなたが日常に疲れを感じ、元気になりたいと思ったら「フィトンチッドを浴びに行こう」「曲線に囲まれた世界に飛び込もう」と考えたらどうでしょう。きっと心身共に癒され、明日への活力が湧いてくるはずです。
(解説:NPO法人Nature Service)
焚き火を見つめるだけで、荒んだ心が修復される!
焚き火をすると心が落ち着く、揺れる炎を見ているとなんとなく安心する。そんな言葉を耳にします。だからこそ、キャンプに行って思い切り焚き火を楽しみたいという「愛好家」も少なくありません。
焚き火を見つめていると心が癒されるという現象は、迷信や思い込みではありません。もちろんちゃんとした根拠があります。知らず知らずのうちに人間を虜にする、焚き火が放つ独特のリズムが、メンタルを整えてくれるのです。
ゆらゆらと不規則に揺れる炎や、パチパチという薪の爆ぜる音は「1/fゆらぎ」というリズムを刻んでいると言われています。人間の脳はこの「1/fゆらぎ」に接すると、リラックスしていることを示す「アルファ波」と呼ばれる脳波を発することがわかっています。つまり、「1/fゆらぎ」を生み出す焚き火は、脳を落ち着かせ、メンタルに平穏をもたらす存在だということです。
限界ギリギリまで痛めつけられた心を抱えたままキャンプに行っても、充分に癒されないのではないかと思っていませんか? 大丈夫。そんなことはありません。キャンプ場についたら早々に火をおこし、揺らめく炎を見つめてみてください。ランダムに刻まれる特別な「ゆらぎ」が、荒んだメンタルを正常な状態に戻してくれます。
(解説:NPO法人Nature Service)
「遺産トラブル」も、キャンプに行けば解決する⁉
人間関係で悩み、憂鬱な毎日を送っている……。よくあるパターンです。友人が信用できないとか、恋人と喧嘩が絶えないとか、兄弟仲が悪くなったとか。そんな問題をキャンプで解決することなんてできるわけないと思ったあなた。大丈夫、解決できるんです。
「この人、もしかして私を騙そうとしているのでは?」「仲よくはしているけど、陰で悪口を言ってそう」「あいつは味方じゃない、敵だ!」。……なぜそんな負の感情が沸き起こるのか。それは、人間が生まれながらにして持つ“裏切り者探索モジュール”のせいかもしれません。
人間は、騙され、裏切られることで、精神的に大きなダメージを受けます。だからそれを防ぐための防御本能が発達しています。自分を騙し、傷つけようとしている「裏切り者」を事前に見つけ出そうとするのです。
その本能的な機能が裏切り者探索モジュールです。このモジュールは、緊張や集中が続き、ストレスが溜まっていくほど研ぎ澄まされていきます。結果として、仲がよかったはずの人を信頼できなくなっていったりもします。互いの思惑が交錯するシーン、例えば遺産相続の話し合いや、出世のかかったプロジェクトの場などではなおさらです。
相手を疑うことで起こる人間関係トラブルを避けるために必要なのは、「裏切り者」に見える対象から距離を取って、先入観をリセットすることです。具体的にはどうすればいいのか。キャンプに行きましょう。自然の中で自分を客観視しながら、過度な集中を一旦解き放ちます。そして厄介なモジュールのスイッチをオフに。
「そういえば、アイツ、いいところもあるよな」
そんな発想が沸いてくればOK。これで万事うまくいきます。
(解説:臨床心理士 杉山 崇)
「仕事のできない自分」が「デキるやつ」に変貌する
会社で「仕事ができないヤツ」というレッテルを貼られてしまっている。こんなにツラいことはありません。仕事が遅いとか、言われたことしかできないとか、小言を言われまくって意気消沈。少しでも認められたい。努力する気はある。キャンプなんて行っている場合じゃない! いいえ。キャンプに行けば「デキるヤツ」になれます。
そもそもキャンプでは、自由を満喫しつつも、やらなくてはならないことがたくさんあります。荷物の準備から始まり、テントの設営、火おこし、料理、後片付け。しかも、時にはいくつもの作業を同時にこなさなければならない瞬間もあります。これは、ビジネスの現場における「マルチタスク」と同じです。
天気の状況を見ながらテントやタープを設営したり、焚き火の準備をしたり。火の具合を確認しながら、いくつもの料理を同時進行で作ったり。快適さや効率性、安全性を考えながら、スケジュールに沿って複数の作業を進めたり。知らず知らずのうちに、誰もがマルチタスクトレーニングをしているのです。もちろん、作業ごとに一瞬の判断が必要なこともありますから、決断力が鍛えられているという側面もあります。
キャンプでの行動の仕方と、日々の仕事の進め方。それを切り離す必要はありません。ちょっと意識を変えるだけで、キャンプは楽しいジョブトレーニングにもなります。何度も繰り返すことで作業のクオリティも上がるし、処理スピードも上がっていきます。その感覚を会社での仕事に応用しましょう。充実したキャンプができた。それなら大丈夫。すなわちそれは、「仕事のデキるヤツ」に近づいたと言っても過言ではないのです。
(解説:心理学者 晴香葉子)
キャンプ場からテレワーク!キャンプ場から出勤なんてことも!?
テレワーク、リモートワークという形も増えてきた昨今。いっそキャンプ場で仕事をしてしまうスタイルもあるのかもしれません。
実際、キャンプ場で取材をしていてもそういった方も。さらにはキャンプ泊後にキャンプ場から出勤するという形も
「キャンプ」という環境が仕事もスムーズにするということも大袈裟ではなく言えてしまうのかも。
「悩みや不安がある」「うまくいかない」からキャンプに行くという発想
キャンプは最高のレジャーであり、仲間や家族との絆を深める場。達成感や充実感が手に入るステージ。それは間違いありません。しかしさらに一歩踏み込んで考察すると、それらは折れた心を修復し、疲れ果てた頭の中をクリアにしてくれる、あるいは問題解決のヒントをくれるという効能にもつながるのです。
つまり、仕事や人間関係、恋愛、子育て、そして人生そのものについて悩んでいることがあるのであれば、キャンプを「クリニック」として活用してもいいということです。
キャンプというレジャーが、さまざまなお悩みや不調の解消に効果的であるということは、心理学的、健康科学的エビデンスによって証明されています。明確な根拠があれば、困った時に安心してキャンプに身をゆだねることができるようになるはずです。
『運と上司に恵まれなくても キャンプに行けば大丈夫』(三才ブックス刊)は、数ある人生の悩み事を、キャンプを通じて解消していくための「処方箋」的な本です。心理学や野外教育のスペシャリストが監修し、陥りがちな悩みや不安への対処法、考え方を、ケーススタディ方式で指南してくれます。あなたが抱えている悩みの解消法も、きっと見つけられるでしょう。
失敗続き、運がない、毎日がしんどい。でも、どうしたらいいかわからない。そんな時には、早速キャンプに行く準備を。逆境を乗り越えて、明るい未来を手に入れるために!
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