カタログのような本にしないことが「焚き火と道具」を執筆するうえでのこだわり
『焚き火と道具』を執筆するうえで、こだわったポイントってありますか?
カタログっぽい形にはしないことでしょうか。
テーマは「道具」ですけど、スペック紹介をするだけの本にはしたくなかったんですよね。
確かに。道具を紹介している本なんですけど、読んでみると道具の「エピソード」中心でした。
なんていうか、道具の紹介を通して、猪野さんの人となりが見えてくるようで面白かったです。
「道具の紹介を通して自分を表現する」というのは、書籍だからこそできたことだと思います。
雑誌で道具を紹介するときは、どうしてもスペック紹介が中心になってしまうのでエピソードまで触れることはなかなかできなくて。
道具の紹介で「タバコ」が出てきたのは、猪野さんらしいなと思いました。
吸いたいものは吸いたいですもん(笑)タバコだって僕にとってみれば、大切な道具です。
雑誌では道具紹介のスペースが限られるため、書き手自身のことまで表現することは難しいそうです。
ですが、今回は猪野さん名義の書籍のため、自由に書くことができたともおっしゃっていました。
でも、「焚き火の道具」としてタバコを紹介するできるのは「猪野イズム」な気がします(笑)かっけ~です。
ちなみに『焚き火と道具』出版記念に作られたノベルティはライター。ノベルティにも「猪野イズム」が炸裂していますね。
本を読み進めていくと、道具紹介だけじゃなくて「お悩み相談」のコーナーもありましたよね。
あれがすごくいいなぁと思って。読み手の疑問にもしっかりと答えているのはもちろんのこと、読み進めるにあたって、いい意味でリズムが出てるな~と感じました。
道具の紹介だけだと、飽きちゃいますからね。ワンポイントとして効かせられればなと思い、入れることにしました。
『焚き火と道具』は読み進めていくとわかるのですが、前述のとおり本全体のリズム感がすごくいいんです。
道具の紹介が続くかと思ったら、あれ?猪野さん自身の話?もありつつ、次回のキャンプに役立つ「お悩み相談」の項目があったり、目を惹くほど素敵な写真があったりと、読んでいて全く飽きません。
普段、あまり本を読まない筆者でも、さくさくと読み進めることができました!
焚き火と道具」は単なる道具紹介の本ではなく、猪野さん自身のエッセイ本のような側面もある
『焚き火の道具』を読んでいると純粋に「へぇ〜こんなが道具あるんだ」と思う一方で、「猪野さんってこんな人なんだ」と猪野さんのことを想像する場面も多かったです。
実は『焚き火の道具』って猪野さんのエッセイ本のような側面もありません?
前作『焚き火の本』では焚き火の魅力を伝えるため、極力自分を出さないようにしました。
けれでも『焚き火と道具』では「猪野正哉ってこんな人間なんだよ」ってことが少しでも伝わればいいなと思って、文中でちょっとしたおふざけもあったりします(笑)
猪野さんの「良いゆるさ」が前面に出ていて本当に面白かったです。思わず、くすっとしてしまうような箇所もあり、自分は終始ニヤニヤして読んでたと思います。
『焚き火と道具』は猪野さんのことを全く知らない人でも、猪野さんに会いたくなるような本だと思いますし、これは役得になっちゃいますが、僕は猪野さんのことを知っているので、尚更面白く感じた気がしています。
前作は「ライター:猪野正哉」が前面にでていますが、今作は「猪野正哉」自身を前面に出せたかなと思っています。
大西さんが「エッセイ本のようだ」と感じてくれたのは、こういった背景があるからかもしれませんね。
『焚き火と道具』では「アウトドア業界が、すべて、ガチガチのテクニックやルールで固められているわけじゃないんだよ」ということもお伝えできればいいな、と思ってたんですよ。
ハピキャンもそうですが、アウトドアメディアが増えたことや、SNSの普及によって「アウトドアでは◯◯しないといけない、△△はしてはいけない」みたいな風潮が出てきている気がして。
以前に比べると、世の中のアウトドアに対するイメージが、良い意味でも悪い意味でも定まってきたようには思いますね。
「アウトドアを楽しむこと」って本来、もっと自由でいいと思うんですよ。もちろん、最低限のマナーは守る必要はありますけど、それってごく当たり前のことなんですよね。
僕みたいにタバコを吸ってるアウトドアマンがいてももちろんいいんです(笑)
「アウトドア」って聞くと「青空の下でさわやかにアウトドアを楽しむ」みたいなことが連想されがちですが、「雨が降るなか、タープの下で本を読む」ことだって立派なアウトドアです。
インスタグラムなどのSNSを見ると、キラキラしたアウトドアシーンが多くて「え、ここまでしないといけないの?」と尻込みした経験がある方って案外多いのではないでしょうか?
でも『焚き火と道具』を読んでいると猪野さんが「そんなに肩肘張らなくていいよ、もっと自由で良いんだよ」と言ってくれているようで、すごく安心するんですよね。猪野さんの不思議な魅力です。
そうだ!僕の中で、「焚き火と道具」の一番の特徴だと思ったのが...本文の注釈です!
猪野さんらしさが炸裂しまっくてますよね。
そこに注目してくれてありがとうございます(笑)注釈を入れることは、本を執筆するうえで編集さんと決めていました。
『焚き火と道具』の注釈ってある意味、注釈の概念を壊していますよね(笑)むしろ注釈じゃないし、本文を食ってるとこもありました。可愛らしく表現しつつちょっとした毒もあるコメントがあったり。というか、いつの間にか注釈を読むことが楽しみになってましたもん。
注釈も含めて『焚き火と道具』を楽しんでもらえると、著者としては嬉しい限りです(笑)
大西編集長も言ってますが、『焚き火と道具』の注釈って独特なんです。
「こんなことが注釈に書いてあるの?」と思わずクスッとしてしまうことから「確かにそうだよなぁ〜」と説得力のあることまで注釈に書かれています。
注釈のところだけでも一冊の本にできそうなぐらい、楽しめますよ。