「焚き火コンロXX」商品化までの道のり!初歩段階の構想(STEP1)からデザイン完成(STEP3)まで
STEP1:製品化に向けて優先条件を詰める
今回、初めて焚き火台を製品化するにあたって自分の中でどんな焚き火台にするのか?優先する条件を詰めていきます。
- 焚き火料理に使えるもの
- 軽量なものよりも壊れにくい丈夫なもの
- 収納サイズはなるべくコンパクトに
- 他の焚き火台と似ていないデザイン
- 売れるクオリティのものにする
初めの段階で優先したいことをしっかり決めておくことが、後々デザインや仕様で迷うことが少なくなります。
STEP2.構想から実際のデザインへ
まずは落書きをしつつ、どのような形ができるのかを考えていきました。
焚き火料理に使えることを前提に考えてるため、必須なのは「調理器具を乗せるところ(五徳)」です。できれば複数の調理器具を安定して置けるようにしたい…朝も夜も、時間さえあれば頭をひねります。
悩んでいる時に読んで参考になった本は以下です。ご紹介させていただきます。
CAMP LIFE 焚火道具大全 Autumn&Winter Issue 2018-2019
焚火台やその他の焚火に関する道具を特集した本。メーカーからの情報だけではなく、実際に使った詳しいレビューが載っておりとても参考になりました。
Fielder特別編集 完全焚火マニュアル
焚火台の特集ではないのですが、焚火に関しての知識を頭に入れるのにとてもよかったです。焚火を使うということについて、これを読みつつ考えました。
そして焚火台のアイデアをひらめく!
悩みに悩んでいるときにパッと思いついたのがX字の五徳を2つ並べるというアイデアでした。
火床を40cmにすれば購入した薪も切らずに置ける!…さらにデザインを詰めていきます。最終的には右上のイラストのようなデザインにまとまりました。
溶接や接続金具を使わずカットしたステンレス板のみで成り立つように考えました。そうすることで壊れにくくなります。また、加工が少ない分費用も抑えられます。
STEP3.デザイン案を正式な図面に起こす
ここからがさらに難しくなってきます。デザイン案を図面化していきながらサイズや細部を固めていきます。
私はイラストレーターというソフトを使って作りました。
ソフトが使えなくても手書きの図面で加工を引き受けてくれる会社はありますので、協力会社に相談してみるといいかと思います。
「焚き火コンロXX」商品化までの道のり!協力会社探し(STEP4)から試作品の発注・完成(STEP6)まで
STEP4.協力会社探し
筆者の場合、「ステンレスのカットができる」なおかつ「個人の発注を受けてもらえる」という条件で協力いただけるような会社を探しました。
検索ワードとしては「ステンレス レーザーカット 個人」でした。
見つけたのが三重県鈴鹿市にある「ZAN(ザン)」さん。「ステンレスのカットを得意としている」「試作品の制作を受けている」とのことで問い合わせてみました。
個人のお客さん大歓迎ですよ!と快いお返事。それだけで嬉しくなりました。
というのも、他に問い合わせた会社の中には返信が戻ってこないところがあったり、小ロットのものは…と芳しくないお返事だったりで問い合わせの時点で先行きが不安になっていたのです。
STEP5.試作品の発注
これでいけるはず、というところまで詰めていよいよ試作品の発注です。データを送り、見積もりをもらいます。
1セットだけで頼むと見積もりはどうしても割高になりますが、仕方がありません。思い切って発注です
<試作品の費用を少しでも下げる方法>
●ZANさんのレーザーカットでは窒素を使うクリーンカットと、窒素を使わないエアーカットという方法を選ぶことができます。
●エアーカットにすると焼けやカット断面の荒さが目立ってしまいますがカットの費用は抑えることができます。
(写真上)少し分かりづらいですが左がエアーカット、右がクリーンカットです。クリーンカットの方がきれいなのです。また、工場でのバリ取りを無しにすることで若干ですが費用を抑えることができます。
STEP6.試行錯誤〜完成まで
試作段階から「何度も直して…検証して…」ということが続いていきます。「少し寸法を変えた方が組み立てやすいかもしれない」…など使ってみて初めてわかることがたくさんあります。
特に苦労したのが火床の歪みです。火床は焚き火によって長時間高温になります。するとステンレスの板は熱膨張によりどうしても歪んできてしまいます。
歪むのが当たり前なのですが、歪んでしまっては製品として成立しにくいので、その歪みをできるだけ抑えるにはどうしたらいいかということを考えていく必要があります。
〈歪みを抑えるために考えたこと〉
●空気取り入れのために開けた穴の形が悪い?→穴の形を少し変えてみたけど結局歪む…
●厚さを変えたらどうか?→2mm厚で作り直してみたけれど歪む…
●304という代表的なステンレスでは熱膨張率が高いため、他の種類ではどうか?→少し変化はあったが、歪みが大きい…
等々
歪みについてZANさんにも相談したところ、「簡易的な押し型を作り、凹みを作ることで歪みを抑えられるかもしれない」とのこと!
お金はかかりますが、ここまできたら引き下がれないためやってもらうことに。8角形の押し型の中に、均等に穴の模様を配置しなおしました。
右上写真のように穴の配置や形状を見直したところ、歪みが出づらくなりました。これで完成です!
最初にZANさんにメールをしたのが2018年の12月。ZANさんとのメールの総やりとり数は250通以上!なんと完成までに1年半以上かかりました。
構想から1年半!オリジナル焚き火台「焚き火コンロXX」商品化で充実した達成感を得ました!
苦労し考えて作っただけあって、自分のブランドを作って自分が欲しかったキャンプギアができた!という喜びと達成感は計り知れません。正直言って「今後果たして売れていくのか」「投資額が戻ってくるのか」という心配はありますが、貴重な体験をすることができました。
「焚火コンロXX」はネットショップにて現在予約販売中です。(10月末発送予定、初回ロットのみ割引あります)焚き火料理をやりたい方、人とカブらない焚き火台を探している方におすすめです。
キャンプ場で使っている方々を見かけたら嬉しくて声をかけさせていただくかもしれません。是非ご検討していただけたら幸いです。