焚き火の際に「なぜか煙たいだけでうまく燃えなかった」なんて経験はありませんか。実は、薪には種類や状態によって燃え方に違いがあるため、焚き火がうまくいかない原因は薪の選び方にあるかもしれません。今回は薪の基本的な知識から、購入場所までをわかりやすく解説します。
この記事を読んでわかること
- 薪の種類(針葉樹・広葉樹)ごとの特徴と最適な用途が分かる
- 焚き火、調理、暖房など、キャンプでの目的に合わせた薪の選び方が分かる
- 薪の大きさや乾燥具合が燃焼に与える影響と、その見分け方・保管方法が分かる
まずはここから!薪の基本的な種類と特徴

薪には大きく分けて「針葉樹」と「広葉樹」の2種類があり、それぞれ燃え方や得意なことがまったく違います。
この違いを理解することが、焚き火マスターへの近道です。それぞれの特徴を知って、上手に使い分けていきましょう。
針葉樹の薪:焚き付けや短時間燃焼に最適
スギやマツ、ヒノキに代表される針葉樹の薪は、内部に油分や空気層を多く含んでいるため、非常に火付きが良いのが特徴です。
燃え上がるスピードが速く、焚き火を始める際の「焚き付け」に向いているほか、一気に高い火力を生み出す力も持っています。そのため、短時間でさっとお湯を沸かしたい時や、冷え込んできた朝晩に素早く暖をとりたいときなど、火力がほしいときにも頼りになる存在です。
ただし、燃え尽きるのも早いので、長時間焚き火を楽しみたい場合は、こまめな薪の追加が必要です。
パチパチと心地よい音を立てて燃えますが、「火の粉が飛びやすい」「煙やススが出やすい」といった一面も。
風が強い日には風防を使ったり、近くに燃えやすいものがないか周囲の安全確認をしたりして対策しましょう。
広葉樹の薪:長時間燃焼や調理・暖房に最適
ナラやクヌギ、カシといった広葉樹の薪は木の密度が高く、ずっしりと重いのが特徴で、その分、火が長持ちします。
一度火が安定すれば、少ない薪の追加でも長時間、穏やかな炎を維持してくれるので、ゆっくりと焚き火を眺めたい夜には最適です。
また、火力が安定していて、焚き火料理にもぴったり。煙やススも針葉樹に比べて少ないため、料理に余計な香りがつきにくいのも嬉しい特徴です。
注意点としては、密度が高いために火がつきにくいこと。最初は針葉樹で火を大きくしてから広葉樹を投入するのがおすすめです。
価格は針葉樹よりもやや高めですが、その燃焼時間の長さを考えると、コストパフォーマンスは決して悪くありません。
用途別の最適な薪の選び方

種類別の特徴からも分かるように、『今日は焚き火でじっくり料理するぞ』という日と、『のんびり炎を眺めて癒されたいな』という日で、薪の選び方は大きく変わります。
過ごし方に合った薪を選ぶだけで、焚き火の満足度が大きく変わり、キャンプの時間がもっと快適で充実したものになるはず。ここでは、用途別に最適な薪の選び方を解説します。
焚き火をじっくり楽しむなら「広葉樹」

家族や仲間と火を囲み、ゆらめく炎を眺めながら語り合う時間は、キャンプの醍醐味ですよね。そんな風に、長時間ゆっくりと焚き火そのものを楽しみたいなら、間違いなく広葉樹の薪がおすすめです。
広葉樹は火持ちが非常に良いため、一度火が安定すれば、頻繁に薪をくべる必要がありません。「会話の途中で何度も席を立って、薪を追加する」といった慌ただしさから解放されます。
また、穏やかで安定した炎は、眺めているだけで心を落ち着かせてくれるでしょう。
さらに、熾火(おきび)の状態、つまり薪が赤く燃えている状態が長く続くのも広葉樹のいいところ。
焚き火を主役にした静かで豊かな時間を過ごしたいなら、ぜひナラやクヌギといった広葉樹の薪を選んでみましょう。
▼熾火についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
キャンプ料理を美味しく作るなら「広葉樹」

焚き火で焼いたお肉が、外は真っ黒なのに中は生焼け……と、悔しい思いをした経験がある方も多いはず。焚き火料理を成功させるには、火力が安定していて煙が少ない広葉樹の薪が最適です。
特に、ダッチオーブンやスキレットを使ってじっくり煮込んだり焼いたりする料理では、安定した熱源が欠かせません。
広葉樹なら、調理中に火力が大きく変動することが少ないため、料理が焦げ付いたり生焼けになったりする失敗を防ぎやすくなります。
なお、火力を調整したい時は、薪の置き方を変えてみましょう。薪同士の間隔を広げれば火力は弱まり、密集させれば強まります。
また、広葉樹から生まれる質の良い熾火は、遠赤外線効果で食材の旨みをじっくりと引き出してくれますよ。
美味しいキャンプ飯のためにも、ぜひスギやヒノキといった広葉樹を選んでみてはいかがでしょうか。
冬キャンプで暖をとるなら「針葉樹+広葉樹」

キーンと澄んだ空気の中で楽しむ冬キャンプでは、焚き火の暖かさは何よりのごちそうです。厳しい寒さの中で効率よく暖をとるためにも、火付きの良い針葉樹と、火持ちの良い広葉樹を併用してみましょう。
寒い時期は、とにかく熱を絶やさないことが大切です。針葉樹を焚き付けに使って素早く火を起こし、火が安定したら広葉樹に切り替えるのが賢い使い方です。
広葉樹は一度燃え始めれば、安定した熱を長時間供給してくれるため、体の芯からじんわりと温まることができます。
また、薪ストーブを使う場合も、燃焼効率が良く長持ちする広葉樹が基本です。
さらに、より効率的かつ安定して暖をとるためには、広葉樹が熾火になった状態を維持し、定期的に新しい薪を追加していくのがポイント。
薪をくべる際には、炎が小さくなり、熾火が崩れそうになる少し前を狙うようにしましょう。
薪の選び方は「太さ」と「乾燥具合」も重要

用途に合わせた種類を選ぶことに加え、「薪の質」も焚き火の成功を左右する大切なポイントです。
具体的には「一本あたりの太さ」と「乾燥具合」に注目してみましょう。
ここでは、太さと乾燥具合の観点から、薪選びのポイントを詳しく解説していきます。
火力コントロールには薪の太さが重要
一口に薪と言っても「細い薪」も「太い薪」もありますよね。実は、この太さによって、火力が大きく変わります。
細い薪は、空気に触れる面積が広いため、火がつきやすく、すぐに燃え広がるのが特徴です。
焚き火を始める時や、少し火力が弱まってきた時に追加して炎を育てたい場合には細い薪が最適。
焚き付けに使う小枝やフェザースティックも、細い薪の仲間と考えるとわかりやすいです。
一方、太い薪は火がつくまでには少し時間がかかりますが、一度火が回れば、細い薪よりも長時間、安定した火力を長時間保ってくれます。
火が立ち上がり、火力が安定してきたら、太い薪を主役にするのがベストです。
このように、状況に応じて太さの違う薪を使い分けることで、理想の炎を自在に操れるようになりますよ。
よく燃えるのは乾燥した薪
焚き火を成功させるためには、しっかりと乾燥した薪を選ぶ必要があります。
湿気を含んだ薪、いわゆる「生木」を燃やしても、水分が蒸発するばかりで、なかなか炎が燃え広がりません。その結果、不完全燃焼を起こして、大量の煙とススが発生します。
思うように薪が燃えきらないときはもちろん、煙が目にしみたり、鍋が真っ黒になったりする際には、湿気ている薪を使ってしまっているケースが多いです。
乾燥した良い薪を見分けるために、以下のようなポイントに注目してみましょう。
乾燥した薪を見極めるポイント
- 薪同士を叩き合わせてみて、「カーン」と澄んだ高い音がするものを選ぶ
- 持ったときに、見た目よりも軽く感じるものを選ぶ
- 表面にひび割れが入っていたり、樹皮が剥がれやすくなっていたりするものを選ぶ
どこで手に入れる?薪の購入場所と注意点

薪はキャンプ場のほか、ホームセンターや薪専門店など、いろいろな場所で販売されています。
販売場所ごとに特徴やメリット・デメリットがあるので、ご自身のキャンプスタイルに合わせて選ぶのがおすすめです。
手軽に買うなら「キャンプ場」
多くのキャンプ場では、管理棟や売店などで薪を販売しています。
キャンプ場で薪を購入する最大のメリットは、何と言ってもその手軽さです。
家から重い薪を運んでいく必要がなく、万が一足りなくなってもすぐに買い足せる安心感があります。
ただし、価格は少し割高な傾向です。
また、他の販売場所に比べると販売点数が少なく、選べる種類が少なかったり、乾燥が不十分な薪が混じったりしていることもある点はデメリットと言えるでしょう。
種類を選びたいなら「ホームセンター」
ホームセンターのキャンプ用品コーナーや園芸コーナーでも、束になった薪が売られています。
キャンプ場よりは安価な傾向にあり、広葉樹や針葉樹といった種類も選べるケースが多いです。
一方で品質にはばらつきがあるため、良い薪を選ぶのが大切です。
品質を求めるなら「薪専門店」
品質にこだわりたいなら、薪専門店の実店舗やオンラインストアも選択肢の一つです。
価格はお店のタイプによってさまざまですが、生活燃料として大量に扱うお店では比較的安価で販売されています。
ただし、キャンプ用に品質を高めた薪を少量で販売するお店では、少し高価になる傾向があります。
いずれの場合も専門店に足を運ぶ手間はありますが、樹種が明確で、よく乾燥した薪を見つけやすいのが嬉しいポイントです。
買い出しついでに手に入れるなら「スーパー・コンビニ」
キャンプ場近くのスーパーやコンビニでは、薪が販売されているケースが多いです。
キャンプ場に比べると安価で販売されていることも多く、食材の買い出しついでに購入できる手軽さもメリットです。
しかし、店舗によっては取り扱いがないケースがあるほか、取り扱っていても種類や在庫数が少なく、良い薪を選ぶのが難しいことも少なくありません。
サスティナブルを意識するなら「木の駅プロジェクト 」
少しユニークな選択肢として「木の駅プロジェクト」という取り組みがあります。
これは、地域の森林で発生した間伐材などを地域通貨で買い取り、薪などとして販売する取り組みです。
環境保全に貢献しながら、質の良い薪を安価で手に入れられる可能性があります。お近くの地域で実施されているか、一度調べてみるのもいいかもしれません。
「薪選び」を知れば、焚き火はもっと楽しくなる

燃え方の違う針葉樹と広葉樹、それぞれの役割を理解し、大きさや乾燥具合を意識する。そして、目的に合わせて薪を使い分ける。たったこれだけのことで、焚き火はもっと安全で、もっと楽しいものになります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、何度か試すうちに、きっと自分なりのベストな薪の選び方が見つかるはずです。
今回の記事を参考に良い薪を選んで、素敵な焚き火を楽しんでくださいね。