料理家の桑折敦子さんは「日本全国に足を運び、いろんなものを食べるのが面白い」と言います。その土地ならではの自然や風土を肌で感じながら、一期一会の料理に舌鼓を打つことが何にも代えがたい喜びなんだとか。今回、桑折さんが訪れた岐阜県可児市は、国内の水系で5番目の流域面積を誇る木曽川が流れ、豊かな自然環境を育む地域。その場所で畑を耕し、サツマイモを栽培する人気ヒップホップグループnobodyknows+のメンバー、ノリ・ダ・ファンキーシビレサスさんのもとを訪れ、キャンプに最適な絶品料理を作りながら「農」について語り合いました。

そうこうしているうち、あっという間に美味しそうな料理4品が完成しました。さっそくいただきましょう。

画像19: 写真:GUIDANCE SHOT_棚橋 英人

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【ノリ】この「サツマイモのホッダ」って、どこの料理なんですか?

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【桑折】スリランカ料理です。今回はサツマイモで作りましたが、現地ではかぼちゃを使うことが多いですね。

【ノリ】最後にスパイスとハーブを油で熱してから鍋に入れてましたが、あの香りだけでお腹が減りました(笑)

【桑折】マスタードシードと赤唐辛子とカレーリーフをテンパリング(オイルにスパイスの香味を抽出する)することで、ぐっと香りが立ちますよね。キャンプやアウトドア料理でテンパリングをやると、周囲の反応もいいと思いますよ。

ノリさん、お味はいかがですか?

【ノリ】サツマイモの甘さが引き立ってますね。自分が育てたイモですけど(笑)。今年のサツマイモは上出来です!うまい!!

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【桑折】サツマイモ料理はもうひと品。「ローズマリー風味のフライドサツマイモ」です。ローズマリーはここの畑に生えていたものを使いました。

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【ノリ】スキレットで揚げ焼きにして簡単に作れるのがいいですね。

【桑折】あと2品は、アウトドア料理ならではの炭火で焼いた茄子で作る「焼き茄子のメリジャノサラダ」と、ノリさんのディルパスタを使った「トマトと魚醤のディルパスタ」です。

【ノリ】「メリジャノサラダ」なんて初めて食べたけど、ミントがいい味出してますね。もう全部がうめぇっす!!

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新しい農産物に、その土地ならではの農産物。背景に思いを馳せることで見えてくるものがある

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かつてノリさんが、愛知県長久手市の畑で修行されていた頃は、地場の伝統野菜「真菜」を栽培していたそうですね。可児の道の駅でも他の地域では目にしない野菜が並んでいましたし、農産物には地域性があるところも面白いですよね。

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【ノリ】農産物はその地域の気候や風土が強く影響するので、必然的に地域性が表れますよね。だからこそ、その土地でしか収穫できない野菜は大切に残していきたいというのが個人的な考えです。

そういえば、先ほどの料理(トマトと魚醤のディルパスタ)にも使った「ディルパスタ」は、ノリさんの畑で育てたディルを練り込んだものですよね?

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【ノリ】はい。たまたまハーブ栽培が上手くいったので、うちの農園の商品として販売しています。そういった取り組みが横に広がれば、ハーブが可児市の新たな名産品になる可能性もありますし。各地域で新たに生まれる農産物もあれば、残すべき農産物もある。そこが農業の面白いところでもあると思ってます。

【桑折】食材って、たとえば玉ねぎひとつをとってみても、地域ごとに収穫の時期が違うじゃないですか。だから、スープストックトーキョーで通年販売しているスープの材料の産地は、一年を通して九州からだんだん北上して行ったりもするんです。

それは、旬な産地から取り寄せたほうが、量も値段も安定するからですか?

【桑折】そうです。でもそうすると、スープの味が変わってしまうこともあります。お客さんからすれば同じスープを頼んでいるのに、「なんだ、味が違うじゃないか」ってなりますよね。けれど私は、それでもいいと思っていて。私が作っているスープって、記念日に行くレストランで出るような非日常の料理ではなくて、あくまで日常的なもの。だから、ベースの味から逸脱しない範囲で多少の違いが生まれることは、むしろいいことだと思っているんです。同じ野菜でも地域が違えば味が変わるのは当たり前ですからね。

【ノリ】食卓に並ぶ料理を口にする時、味だけでなく、それぞれの食材の産地まで意識してもらえたら、僕たち農家としては嬉しい限りです。

【桑折】水源が変われば水の味に違いが出るし、その水の影響を大きく受ける農作物には個性が表れます。自分が食べるものや飲むものの背景をイメージできるようになると、もっと食が面白くなるし、その見識を深めることも、これからの時代は大切になってくると思います。

画像: 新しい農産物に、その土地ならではの農産物。背景に思いを馳せることで見えてくるものがある

料理家・桑折敦子さんが作ったキャンプ料理のレシピがコチラ!

〈レシピ01〉サツマイモのホッダ(ココナッツミルク煮)

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【材料】
●サツマイモ……大1/2本
●ココナッツミルク……1缶
●カットトマト缶……大さじ3(またはトマト小1個)
●水……1カップ
●ターメリック……小さじ1/2
●カレー粉……小さじ1
●モルディブフィッシュ……小さじ1/2
●塩……小さじ1/2 
●ココナッツオイル……大さじ1
●マスタードシード……小さじ1
●赤唐辛子……1本
●カレーリーフ……1枝分

【作り方】
①サツマイモは一口サイズに切って鍋に入れ、ココナッツミルクと水、カットトマト缶(大さじ3程度)、塩、ターメリック、カレー粉、モルディブフィッシュ(鰹節粉で代用可能)を入れて煮込む。
②サツマイモが柔らかく煮えたら、塩で味をととのえる。
③小さな鍋にココナッツオイルとマスタードシードを入れて熱し、マスタードがパチパチしてきたら赤唐辛子とカレーリーフを入れてテンパリング(オイルにスパイスの香味を抽出する)し、②の鍋に加える。

〈レシピ02〉ローズマリー風味のフライドサツマイモ

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【材料】
●サツマイモ……小1本
●にんにく……1かけ
●ローズマリー……2枝
●オリーブオイル(またはこめ油など)……適宜
●塩……少々

【作り方】
①スキレットにオリーブオイルと潰したにんにく、ローズマリー、一口大に切ったサツマイモを入れて弱めの中火で熱する。ゆっくり油の温度が上がったら上下を返して両面揚げ焼きにする。
②サツマイモに火が通ったら油を切って、塩を振りかける。

〈レシピ03〉トマトと魚醤のディルパスタ

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【材料】
●トマト……2個(またはカットトマト缶……2/3缶)
●にんにく……1かけ
●オリーブオイル……大さじ2
●ナンプラーなど魚醤……小さじ1強
●胡椒……少々
●ディルパスタ……1/2袋

【作り方】
①フライパンにオリーブオイルを入れ、にんにくのみじん切りを香りが出るまで熱する。ざく切りしたトマト(カットトマト缶でも可)を加えて煮込み、トマトが煮崩れたら魚醤と胡椒で味をととのえる。
②ディルパスタは魚醤(分量外)を加えたお湯で茹で、①のトマトソースと和えて皿に盛る。

〈レシピ04〉焼き茄子のメリジャノサラダ(ディップサラダ)

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【材料】
●米茄子(大きめの茄子)……2本 (※千両なすなら6本程度)
●にんにく……1かけ
●アンチョビペースト……小さじ1強
●レモン汁……レモン1個分
●塩・胡椒……適宜
●エクストラバージンオイル……大さじ1強
●ミント……適宜

【作り方】
①茄子は包丁で皮に切れ目を入れ、炭火で真っ黒になるまで焼く。少し冷めたら皮をむいて、にんにくのみじん切りを加えて包丁でたたく。
②①にアンチョビペーストとレモン汁を加えて混ぜ合わせ、塩・胡椒で味を整え、皿に盛りつける。オリーブオイルを回しかけて、ミントを盛る。

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