そもそも「低温やけど」ってどんな症状? 「やけど」とは何が違う?
よく聞く「低温やけど」。
なんとなく「低温」という部分で軽度のやけどを想像しますが、実際には普通のやけどよりも重症化することがある危険なケガです。
通常のやけどは、皮膚の表面に熱源が接触してしまうことで起こります。
このため身体が「熱い!」と熱源から逃げようとするので、そこまで重症化しにくいことがほとんどです。
キャンプで言えば、「焚き火の火の粉が飛んでくる」とか「ストーブに触ってしまう」とかで起こるやけどがこれに当たります。
水ぶくれなどしますが、数日で痛みがなくなり、剥がれた皮が再生すれば完治します。
一方、低温やけどは温度が低い熱源に触れるため、「熱い」と感じにくく、気づかないまま皮膚の奥深くまでじっくりと進行してしまうのが問題です。
気づいた時には再生が困難な皮下組織が壊れてしまう重症になるというリスクがあります。
低温やけどは自然治癒が進みにくく、場合によっては手術が必要になったり、放置しておくと感染症にもかかりやすくなってしまうため注意が必要です。
また、低温やけどは発症した段階ではそれと気づかないことが多いです。
皮膚の表面の状態だけで言うと、
・ヒリヒリとした痛み
・うっすらとした赤み
だけというケースも多く、赤くなった皮膚を見ても「放っておけば治るだろう」と感じるぐらいです。
しかし、低温やけどが恐ろしいのは、この段階で皮下組織が損傷している可能性があることです。皮下組織が損傷しても痛みはありませんが、そのまま1~2週間ほどたつと血流がなくなります。
血流がなくなると、表皮が壊死をし始め、真っ黒になったり、表皮が剥がれて皮下組織がむき出しになります。
こうなると自然治癒は期待できず、病院での治療も長くかかり、傷跡は一生残ることもあります。
名前以上に怖い「低温やけど」の実態がお分かりいただけるでしょうか?キャンプでは、特に冬場に「低温やけど」は身近な危険であるため、その対策についてもお伝えしていきます。
キャンプで起こりうる「低温やけど」のリスクとは
キャンプには「低温やけど」のリスクが多数あります。
特に初心者キャンパーが冬場好んで使われることの多い「湯たんぽ」「使い捨てカイロ」「電気毛布」という便利な暖房器具はいずれも危険。それらのリスクと低温やけどの回避策について見ていきましょう。
湯たんぽ
湯たんぽは、冬キャンプ初心者の多くが持参必須と考えるマストバイアイテムですね。
1,000円程度と安価ながら、シュラフに入れれば朝まで温かい。高価な冬用ダウンシュラフよりはまずは湯たんぽで…という理由で私も最初のころは使っていました。
しかし湯たんぽは非常に低温やけどのリスクが高いアイテムでもあります。
シュラフの中は足も動かしにくいので、どうしても湯たんぽにくっついた部位が固定されてしまうためです。
そして眠ってしまえば朝まで8時間程度も密着したままですので、とても危険。
そして、湯たんぽにはたいがい断熱用の布袋などが付属していますが、これだけだと低温やけどの危険性はほとんど下がりません。
さらにタオル一枚巻いたぐらいでもまだ危ないです。
私の経験から言うと、湯たんぽをシュラフに入れる場合は、シュラフの一番底に入れるようにし、足は直接くっつかないようにするぐらいでちょうどよいと思います。
使い捨てカイロ
人によっては何枚も使って寒さを和らげることもある使い捨てカイロ。
使い捨てとはいえ1つ1つの値段は安く、手に入れやすいこともあって、こちらも便利なアイテムです。
使い捨てカイロの場合、「正しい使い方」を意識すれば低温やけどリスクはかなり下げられます。
まず、貼るタイプの場合は、かならず服の上から貼りつけ、肌に直接触れないようにすること。「直接肌に触れない」は貼らないタイプでも同様に気を付けたいポイントです。
そして湯たんぽ同様、就寝時の使用を避けること。連続して数時間、同じ箇所を温めることのないようにしましょう。
電気毛布
ポータブル電源だけでなく、小型のモバイルバッテリーでも使えるものが出てきている電気毛布(電気ブランケット)。
極寒のキャンプでも一気に快適さがアップする、一度使ったら病みつきになるアイテムです。
こちらは比較的安全度は高いのですが、やはり就寝時の使い方には注意しましょう。
ポイントはシュラフの上にかけるか、下に敷くようにし、シュラフの中には入れないこと。
湯たんぽなどと同じように、肌に直接触れないようにするための工夫ですね。
また、温度設定は就寝時は低めにするようにします。理想を言えば就寝前には電源を切っておくのがベストです。
低温やけどかな…と思った時は、まず冷やし、念のために診療を!
「低温やけどかな?」と気づくのはキャンプの場合、ほとんど間違いなく起床時です。
皮膚に違和感があったり、赤くなっている場合、まずは冷やしましょう。冷やす場合、ベストは水道の清潔な流水を使います。
服の上から水をかけても構いませんが、結果的にそれが原因で風邪を引いたりしないよう、着替えなどの用意も合わせて行うとよいでしょう。
冷やす道具として氷などを使っても良いですが、ただし冷却スプレーや熱冷まし用のシートなどは使用しないようにします。
また、この段階で自己判断で医薬品を使うのも避けます。特にアロエなどの薬草類を現地調達するのは絶対にやめましょう。
低温やけどは状態が自分でもわかりにくいため、症状があったらできるだけ早めに医療機関の診察を受けましょう。
皮膚科、もしくは外科、お子さんの場合は小児科でも大丈夫です。
低温やけどは体験しないのが一番! リスクはあらかじめ回避しましょう!
キャンプでの低温やけどは実は私も経験があります。
まだ冬用ダウンシュラフを持っていない初心者の頃、化繊の冬用シュラフに湯たんぽを入れてしのいでいたのですが、朝起きると湯たんぽがふくらはぎにくっついていました。
どうも足の皮膚がピリピリするなと感じ、見てみたら皮膚が真っ赤になっていました。
寝ているときは温かくて気持ちいいなと思っていたぐらい。まさに「体験してその恐怖を思い知った」という感じでした。
私の場合は幸い大したことはなく、数日で赤みも取れていったのですが、本当に運が良かっただけでしょうね。
低温やけどはなってみてからでは遅く、大きなケガとなります。これからの季節、十分に用心をしてくださいね!
▼キャンプの怪我についてはハピキャンの記事も参考にしてください!