キャンプ飯づくりをはじめ、バトニング、フェザリング、ブッシュクラフトなどの各種作業で活躍してくれるアウトドア用のナイフ。長期間使っていると、家庭用の包丁と同様に切れ味が悪くなってくるため、長持ちさせるには定期的かつ適切なメンテナンスが必須です。そこで、初心者にもわかりやすいように、ナイフの研ぎ方の詳しい手順を解説します。
※本記事にはプロモーションが含まれます。
ナイフはどの部分を研ぐべき?形状別に解説!

キャンプ・アウトドア用のナイフは種類によって形状(グラインド)が異なり、それぞれ研ぐ部分や範囲が異なります。
ここでは、ナイフの形状別に研ぐ範囲を紹介します。
フラットグラインド:セカンドベベルを研ぐ

フラットグラインドは包丁のようなナイフです。食材をカットしやすく、料理を作る際に重宝します。
フラットグラインドはブレード(刃)の背にあたる部分のやや下から、刃先に向かって平らな形をしており、刃先には1mmほどの段を持っているのが特徴。この段をセカンドベベルと呼び、研ぐのはセカンドベベルの部分です。
なお、背の部分から刃先まで一直線の「フルフラット」と、背の部分と刃先の中間で一度段がある「フラット(セイバー)」がありますが、研ぐ部分はどちらも同じです。
スカンジグラインド:エッジ部分を研ぐ

スカンジグラインドは、昔から北欧で使用されているタイプのナイフ。刃に厚みがありますが、刃先が鋭角で、バトニングやブッシュクラフトなどに便利です。
研ぎ直しするときは、ブレードのエッジ(鋭利な刃が付いた部位)を砥石にあてて研ぎます。初心者でも比較的研ぎ直しがしやすいタイプです。
ホロウグラインド:セカンドベベルを研ぐ

ホロウグラインドは、ブレードの中央から刃先にかけて鋭くなっている形状のナイフです。
刃先が細いため、切れ味が良いのが特徴。フラットグラインドと同様に、研ぎ直しするときはセカンドベベル(刃先にある1mmほどの段)の部分を研ぎます。
初心者でも研ぎやすい上、切れ味が簡単に戻るのがうれしいポイント。一方で、刃先が薄い分、強度は高くないので、破損しやすいデメリットもあります。
コンベックスグラインド:刃先を研ぐ

コンベックスグラインドは、斧(おの)や鉈(なた)に使われることが多い形状で、別名“ハマグリ刃”とも呼ばれるナイフ
刃に厚みがあるので、パワフルさがあり、バトニングやブッシュクラフトに適しています。
研ぎ直すときには、ブレードを少し起こしながら、刃先を砥石に当てて研いでいきます。エッジが砥石にあたる面が広い上、角度がつかみにくく、研ぎ直しが難しいのが難点です。
チゼルグラインド:刃がついている側を研ぐ

https://happycamper.jp/_ct/17486538/
チゼルグラインドは、別名“シングルエッジ(片刃)”とも呼ばれるナイフ。チゼルとは英語でノミやタガネのことを表し、大工道具のノミをはじめ、包丁、鉈、切り出しなどに利用されています。
“片刃”と呼ばれるとおり、刃が片面にのみ付いているため、刃が付いている側を研ぎます。刃先が鋭角になりすぎると刃こぼれしやすいため、初心者だと難しさを感じやすいです。
▼ナイフの種類や選び方についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
ナイフを研ぐときに必要なもの一覧

ここではアウトドア用ナイフを研ぐときに必要な道具と役割などについて紹介します。
砥石
砥石(といし)は、ナイフを研ぐ際に欠かせないアイテムです。大きく分けると天然砥石と人工砥石の2種類があります。
さらに、石のかたさや粒子の大きさなどの違いにより、荒砥(あらと)、中砥(なかと)、仕上げ砥などに分かれます。
布
ナイフを研いでいる最中に砥石がすべることがあるため、砥石の下には水でぬらした布を敷くと作業がしやすいです。
砥石が滑ると、作業が効率的に進まないだけでなく、思わぬケガを招くこともあります。汚れても良い布を使って、砥石の滑りを防止しましょう。
水を入れる容器
砥石を研ぐ際には、ナイフを濡らしながら研いでいく必要があるため、水を入れる容器を準備しましょう。
大量の水を要するわけではないので、ナイフが浸かる程度の浅い容器で問題ありません。紙皿やコップを代用してもいいでしょう。
ナイフを研ぐときの砥石の選び方

前で紹介したとおり、砥石にはいくつかの種類があります。ここでは、砥石の種類や選び方について詳しくチェックしていきましょう。
種類(素材)
砥石には大きく分けて、天然砥石と人工砥石の2種類があります。
人工砥石にはスタンダード砥石、セラミック砥石などの種類があり、中には天然砥石の粉末と人工研磨剤をブレンドした商品も。
天然砥石のほうが刃物の見た目が美しく、強度も高く仕上がりますが、手軽に入手しやすいのは人工砥石です。また、人工砥石のほうが硬度が高いこともあり、初心者でも研ぎやすいですよ。
番手
砥石の番手とは粒子の粗さを数字で表したものです。数字が大きいほど粒子のきめが細かく、反対に数字が小さいと粗くなります。
以下は主な砥石の番手とその特徴です。番手とその分類はメーカーによって異なるため、目安としてご参照ください。
番手の分類
- 荒砥(80〜600番、500番前後あるいはそれ以下など):ナイフの刃こぼれの修復、グラインドの形状をカスタマイズするのに便利
- 中砥(700〜2000番など):切れ味を戻す、日常的なメンテナンスに向いている
- 仕上げ砥(2000番~):刃の切れ味を良くする、表面の傷を取る、鏡面のように仕上げるときなど
なお、仕上げに革砥(かわと)を使い、砥石では取りきれない細かい“かえり(バリ)”を取り除くこともあります。
ナイフを研ぐ前に確認すべきこと

ナイフを研ぐ際、作業に入る前にいくつか確認すべきことがあります。確認するポイントは次のとおりです。
①切れ味
ナイフを研ぐ前に、まずは切れ味を確認しましょう。
切れ味を確認する簡単な方法は、刃を親指の爪にあてて、刃がすべるか、あるいは引っかかるかを見ること。
刃がすべる箇所があれば、その部分は切れ味が落ちています。
②事前準備
砥石は使用前に30分ほど水につけておき、水分を吸収させておきます。
水を吸収することでナイフのすべりが良くなり、作業しやすいです。
なお、砥石の種類によって給水時間の目安が異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。
③砥石をあてる角度
角度が適切でないと刃の形が変わってしまうので、刃を正しい角度で砥石にあてましょう。
ナイフの種類によってあてる角度は異なりますが、ナイフを寝かせた状態で砥石に載せ、刃先を起点に少しずつ起こし、砥石にあたった場所を目安に角度を固定します。
また、作業中は正しい角度を一定に保つことが大切です。途中で角度が変わると刃をうまく研げません。
ナイフの研ぎ方

ここではナイフの研ぎ方について解説します。具体的な手順を紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
【手順1】研ぐ部分に印をつける
ナイフを研ぐときに、研ぐ部分に油性マジックなどを使って目印をつけておくのがおすすめです。
作業を進めて、マジックで塗った色が消えていれば、その部分はきちんと研げている証拠。作業をしながら、随時印をつけ直すのもポイントです。
なお、ナイフの形状によって研ぐ部分や範囲が異なるため、事前に確認しましょう。
【手順2】研ぐ部分に指を添える
適切な角度で砥石にあてて、研ぐ位置に指を添えます。ナイフを離したり、研ぐ面を変えたりするときも同様です。
ちなみに、ナイフを研ぐ作業は素手で行います。手袋をつけると研ぎ具合を確認しづらい上、かえって危険なので着用しません。
【手順3】力を入れすぎないように刃を研ぐ
ナイフを研いでいるときに注意したいのが、砥石の同じ箇所で研ぎ続けないこと。
研いでいる場所が消耗していくため、ずっと同じ箇所を使っていると凹みができてしまいます。したがって、砥石全体を使って研ぐのがポイントです。
また、力を入れすぎないように作業するのも大切です。力が入りすぎてしまうと研ぎにくかったり、途中で砥石にあたる角度が変わってしまったりすることがあるので注意しましょう。
力を強く入れすぎず、かといって弱すぎず、ほど良い力加減で研ぐことを意識してくださいね。
【手順4】砥石が乾いたら水を足す
砥石は水にぬらした状態で使用しますが、作業を続けるうちに乾燥してくるので、随時水を足しましょう。
水を足しながら作業することで、ナイフを安定して研ぐことができます。
水を足す際には、砥石に残っている研ぎ汁は洗い流さないように注意してください。
【手順5】欠けがなくなるまで研ぐ
ナイフの刃が欠けている場合、欠けがなくなるまで研ぐことが大切です。
欠けた部分だけを修復すると、ナイフの形状が変わってしまいますが、気にならなければそのまま使ってもOK。
きれいに仕上げたいときは、刃全体を同じ幅で研ぐのもアリです。ただし、全体を研ぐと刃のサイズが小さくなってしまう点には注意しましょう。
【手順6】両刃の場合は両面を同様に研ぐ
ナイフの種類によって、片刃タイプ、両刃タイプがあります。片刃の場合は刃のある側だけを研ぎますが、両刃は両面を同じバランスで研ぐのがポイントです。
上級者であれば両面が同様に研げているかわかりますが、慣れないうちは片面ずつ同じ回数で研ぐ方法がおすすめです。
【手順7】かえり(バリ)があるかを確かめる
ナイフを研いだあとに、「かえり」や「バリ」などと呼ばれる小さな引っ掛かりができることがあります。
見た目では確認できないほど小さなものもあるため、刃先をさわって確かめることが大切です。バリがあるときは、重ねて研ぐことでバリを取り除けます。
バリがあると切れ味に支障がでるため、きれいになくすのがポイントです。
【手順8】オイルを塗る
ナイフを研ぎ終わったら水分をよく拭き取ります。ナイフに使われている素材によっては、水分が残っていると錆びやすいので注意が必要です。
完全に乾燥させたら、仕上げにオイルを薄く塗るのがポイント。オイルでコーティングすることにより、ナイフの錆を防止できます。
▼オピネルナイフの扱い方・お手入れ方法はこちら!
切れ味が蘇る!ナイフをメンテナンスして長く愛用しよう!

ナイフの切れ味が悪いと、作業効率が低下するばかりか、思うように作業が進まないストレスもたまってしまいます。
愛用しているナイフの切れ味を定期的に確認し、必要に応じて、使用前に研いでおきましょう。しっかりメンテナンスを行うことでお気に入りのナイフを長く使えます。
初心者でもコツをつかめば難しくないので、本記事の内容を参考に、ぜひナイフ研ぎに挑戦してみましょう。