ルール.3 バックストーリーのある商品を
一人が寝るのにちょうどいいテントを立てて、こぢんまりとしたテーブルを前にちょこんと座る。キャンプにのめり込んで1人で出かけるようになった頃から、こいしさんのスタイルは大きく変わりません。
「足るを知る」。旅をするようにキャンプがしたかったこいしさんにとって、キャンプ時の快適さと移動時の荷物量とのバランスを取り、“気軽さ”を損なわないことは、とても重要なことだったからです。
消費は投票である
こいしさんのサイトを見れば、国内ブランドのキャンプギアが多いことに気づきます。こいしさんはいったい、どういう基準でギアを選んでいるのでしょう?
「師匠からの教えで、最初から国内ブランドのギアを多く使ってはいたんです。けど、意識して選ぶようになったのは、いろんなメーカーさんと話をする機会が増えてからですね。日本で使われることを想定して作られた日本のギアは、やっぱり国民性や風土に合っているものなんだなって実感することが多くて。
あと、作っている人の顔が見えたり、作られた背景にあるストーリーがわかったりすると、より楽しめる性分なんだって自覚したのも、国内ブランドが多い要因だと思います」
製品の見た目だけでなく、機能や作られた背景にも思いを馳せること。
ギアに対して並々ならぬこだわりを持つことの多いキャンパーにとっては、もしかしたら当たり前のことかもしれません。ただ、もともとは普通のOLだったこいしさんにとって、そうした価値基準に触れるきっかけを与えてくれたのが、キャンプギアでした。
「キャンプギアって基本的に実用品なので、まず機能について勉強しなきゃいけないですよね。それを知るだけでも楽しいんですけど、アウトドアメーカーってみんな自然のことを考えているから、調べていくうちに感動するエピソードに出会えることも多くて。だから背景を掘っていくこと自体もまた楽しいんです。
言い換えれば、キャンプギア選びを通じて、商品を買う基準が私の中で1個増えたんです。『高い安い』や『見栄えの良し悪し』や『機能の良し悪し』だけではなく、『どういう思いが込められているか』。バックストーリーにお金を払いたいという基準は、キャンプギアだけではなく、普段の日用品の買い物とかでも当たり前になりましたね」
「それで言うと『い・ろ・は・す』のペットボトルがリニューアルされた時も、きっと何か環境に配慮されたデザインなんだろうなとは思っていましたし、私の中では『環境、環境』って言いすぎていないところもキュンポイントです(笑)。
繰り返しになっちゃいますが、製品の背景にある素敵なストーリーは、自分で調べるほうが楽しいですし、調べた結果『自然や地球について考えるきっかけづくりになりそうだな』と感じた製品は継続して手に取りやすいですよね」
「それって『消費は投票である』ってことですか?」と水を向けると、「まさにそれです」とこいしさんは即答してくれました。幅広い視野で活動する企業の商品に、日々の一票を投じること。社会を少しでもよくする現実的な方法は、もしかしたらそうした小さな積み重ねにあるのかもしれません。
共に楽しむ仲間を増やしたい
振り返ってみると、こいしさんが著してきた本のほとんどが初心者に向けられていることに気づきます。キャンプはもちろんのこと、カメラだったりスパイスカレーだったり日本酒だったりワインだったり。こいしさんの活動はどれも、自分がやってみて楽しかったことを紹介する形を採ってきました。
何よりもまず、自分が楽しむこと。そこに嘘がないから人は興味を持ち、惹かれ、集まり、熱が伝播していきます。
「いい循環が生まれてほしいと思っているんです。まず、誰か1人にだけでもいいから、私が選んだモノやコトの心地よさが伝わってほしい。そしてその人の心地よさが、また誰かに伝わって……っていう風に循環が続いてほしい。そういう思いで日々を生きています」
かつての女子キャンプやソロキャンプがそうであったように、きっとこの熱も伝わって行くに違いない。自然を守り、育むことも、同じように“楽しい”のだから。
こいしさんはただ純粋に、エコキャンプを共に楽しむ仲間を求めているのです。