アメリカ視点で見る、日本の「キャンプブーム終焉」。アメリカ在住ライターに学ぶ、キャンプの本質

2025.01.14 投稿

 アメリカ視点で見る、日本の「キャンプブーム終焉」。アメリカ在住ライターに学ぶ、キャンプの本質

ハピキャン編集部

ハピキャン編集部

SNSの流行や新型コロナウイルスの影響で盛り上がりを見せた、日本のキャンプブーム。人気のキャンプ場が数か月待ちになるほど人気となりましたが、現在はブームが落ち着き、昨年は「キャンプブーム終焉」とも話題になることがありました。この日本のキャンプブームを海外はどう見ていたのか、キャンプ文化が根付くアメリカでキャンプを楽しむ、キャンプライター 舟津カナさんにお話を伺いました。

日本の「キャンプブーム」とは?

舟津カナ撮影

日本ではこれまでに2回の「キャンプブーム」があったと言われています。最初の「第1次キャンプブーム」は1990年前半、日本がバブル景気で活気づいていた時期に起こりました。アウトドア志向が高まり、アウトドア向きの4WD車の登場などが要因です。

その後、「第2次キャンプブーム」が2013年頃から始まり、SNSでキャンプ写真が流行。さらに2020年ごろ、コロナ渦で3密を避けるレジャーとしてキャンプが脚光を浴びたことや、キャンプを題材としたアニメや漫画といったサブカルチャーの影響、多くのグランピング施設やガレージブランドの登場などもあり、ブームはピークに達しました。

しかし、2024年には予約が難しかったキャンプ場も予約しやすくなったり、フリマアプリでキャンプ用品を売ったりする人が増え、「キャンプブーム終焉」と語られることもあるのが現状です。

では、この「キャンプブーム」という現象は、世界でも見られるのでしょうか?

アメリカ在住キャンプライター 舟津カナさんに聞きました!

編集部 川窪

舟津さん、アメリカ在住ならではの視点でご回答よろしくお願いします!

Q1.アメリカには「キャンプブーム」はありましたか?

筆者

アメリカでは「キャンプブーム」と呼べるような現象はあまりありません。キャンプはレジャーというより、日常的な趣味やライフスタイルの一部であり、「好きな人がする」という姿勢が根付いています。そのため、日本のように「流行」や「ブーム」によって多くの人が参入することは少ないです。

また、キャンプ大国アメリカですが、すべての人がキャンプをするわけではなく、「キャンプをする人」と「しない人」がはっきり分かれている印象です。

舟津カナ撮影

さらに、キャンプブームの火付け役ともなった「キャンプ飯」というものもなく、普段食べているものをキャンプでも食べます。

キャンプ場で料理をするのは不便なので、準備が必要な料理は下準備を家で済ませ、キャンプ場では焼くだけなど、日本のようにキャンプ場で料理を作ることは少なく、料理に時間をかけず、家族や友達と火を囲んでゆっくり飲むことを楽しみにしている人が多いように思えます。

編集部 川窪

アメリカはBBQのイメージから、キャンプ飯にこだわるものだと思っていました!

手軽で効率的なスタイルが好まれるんですね。

とはいえ、アメリカはダッチオーブンの本場でもありますから、キャンプ飯にこだわる人ももちろん多いです。手軽さや効率を求める一方で、アウトドア料理に対する情熱を持つキャンパーも多いですよ。

Q2.日本のキャンプブームをどのように思いましたか?

舟津カナ撮影

日本のキャンプブームの中、帰国したときに日本のキャンプ場に行きましたが、アメリカとの違いに驚きました。

まず1つは、キャンプギアへのこだわりとその費用のかけ方が桁違いであること。

いくつかのキャンプ場を訪れましたが、スノーピーク商品でサイト全体を揃えている方や、驚くほど多くのギアをきれいに並べている方が多く、どのサイトもおしゃれでスタイリッシュでした!

アメリカとは全く違う光景に感動しました。

もう1つの違いは、1泊で帰る人が多いこと。

あんなに素敵にサイトを設営しているのに、1泊のみでは設営と撤収に多くの時間を割くことになります。

アメリカではキャンプ場を拠点として3~4泊するのが一般的で、1カ月滞在する人もいるほどです。1泊だと設営、撤収に時間をとられてゆっくり自然を堪能する時間が足りないのではないかと感じました。

編集部 川窪

たしかに、他のキャンプサイトやSNSを見ると、おしゃれですよね。次々欲しいギアが出てきて、お金が飛んで行きます…!

また、1泊キャンプが多いことについては、仕事熱心な日本人特有なのでしょうか。わが家もなかなか仕事や学校を休めず、土日の1泊ばかりなので連泊に憧れます。

Q3.アメリカと日本のキャンプの違いは?

舟津カナ撮影

日本のキャンプギアやキャンプ飯の写真はどれもおしゃれですね!それを見て憧れ、キャンプを始めた人も多いかと思いますが、アメリカのキャンプにおしゃれを求めている人はいません(笑)

アメリカでは家にあるキッチンギアを持って行ってキャンプで使用。

日本では日常とキャンプを切り分け、別途キャンプ用に物を買い足している人が多いと思いますが、アメリカではキャンプは最終目的ではなく、あくまでも「宿泊方法」。

キャンプをすることで「宿泊費が安くなる」「目的地に泊まれる」「自然をたっぷり堪能できる」とう感じで、キャンプに全力投球する人は少ない印象です。

なので、キャンプをスタートするときに、「テント、スリーピングバック、キッチンギアすべて買い足さないと!」ということはなく、家にあるものでまずは始めるためハードルが低く、無理をせずにキャンプを楽しんでいます。

編集部 川窪

私自身もそうですが、おしゃれなキャンプをすることが目的になっている人も多い気がしますね。

家にあるものからスタートできることを伝えていけば、キャンプをはじめようと思う人が増えるかもしれませんね!

また、日本で人気のアウトドアギアはコンパクトで軽量なものが多いですが、その分設営や撤収に手間がかかるものも多い。アメリカは車が大きいこともありますが、キャンプ用品にコンパクトさを求めておらず、いかに手間をかけないかが重要視されています。

よって、「いかに簡単にテントがつくれるか」「いかに簡単に薪に火をつけられるか」など効率重視のギアが多く販売されて、それが人気を博しています。

最後に、日本のキャンプシーンに対して一言お願いします!

舟津カナ撮影

日本ではたとえキャンプブームが去ったとしても、もともとキャンプ好きだった人や、ブームをきっかけにその魅力にどっぷりハマった人々が多く残っているため、完全にキャンプ熱が冷めたわけではないでしょう。

それに、日本特有のおしゃれでスタイリッシュなキャンプ文化は、今後も多くの人を引きつけるはずです

一方、アメリカではキャンプを「自然を楽しむための手段」として捉えているため、キャンプ場で「あれもこれも準備しなければ!」と気負うことはなく、むしろ手軽でストレスのないキャンプを楽しむ人が多いように感じます。

キャンプに全力投球する日本のスタイルも素晴らしいですが、アメリカのように「あるもので楽しむ」「効率的なギアでシンプルに過ごす」という考え方は、気軽にアウトドアを始めるための良いヒントになるかもしれません。

結局のところ、どちらのスタイルでも共通しているのは「自然の中で過ごす時間が特別なものである」ということ。形式や道具へのこだわりの違いはあれど、自然の中でリラックスし、心を満たす時間を楽しむことがキャンプの本質なのだと感じます。ブームが去ったと言われているようですが、多くの人に自然を楽しんでもらいたいですね!

編集部 川窪

貴重なお話、ありがとうございました!

「ハピキャン」はこれからもソトアソビの楽しさを伝えていきたいと思います。またアメリカのお話もぜひ教えてくださいね♪

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